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3. 地域の資源や問題意識を発掘する

野焼きの問題をきっかけに、野比さんは町内に住む様々な人々に、稲わらを有効活用することができないかと相談を持ちかけて回りました。すると、意外なほど知恵が集まってくることに気がつきました。

また、このような生物由来の有機質資源はバイオマスと呼ばれ国の重点施策「バイオマス・ニッポン総合戦略」として推進されていて、そして、同じような課題に取り組む自治体が多いこともわかってきました。

「多段的に使うことを「カスケード利用」というのか・・・カタカナの言葉がたくさんあって難しいけど、要はなかなかゴミにならないようにすればいいんだな。食料、飼料、肥料、材料、燃料がバイオマス活用順序の5F・・・と。なるほど、発酵したり蒸し焼きにしてガスにすると燃料にもなるのか。これは面白い。」さらに、町内のお年寄りからは、昔は稲わらをかまどで飯炊きの燃料に使っていたこと、かまどの灰は畑にまいて土壌改良に役立てていたこと、稲わらから、蓑(みの)、菰(こも)、筵(むしろ)、草鞋(わらじ)、つぶらと呼ばれるベビーベッドのような物に至るまで、実に様々な物に利用していたこと。そして、それらをわら細工の文化として伝えようという市民活動をしているNPOがあることも知りました。

ただ、いずれも大量に発生する稲わらの行き先としては十分ではありません。

食べられないのなら、まずは堆肥化に取り組むのが最も合理的と考え、そこは農業のプロである農協の指導部長を仲間に引き込むことにしました。最初は面倒くさがっていた指導部長も、徐々に重い腰を上げ、稲わらを使った堆肥づくりについて教えてくれるようになりました。発酵を促進し、栄養成分調整のために、畜産排せつ物のきゅう肥を混合すると良いこと。実は発酵させればサイレージ(飼料)にもなること。有機農業への転換で、町内にも堆肥の需要は十分にあるらしいことがわかってきました。

そこで、町内の養鶏農家を訪ねてみると、「いやー。 家畜排せつ物処理法の完全施行がいよいよ今年の11月にせまってきちゃったもんだから、ちょうど困ってたんですよ。最近、宅地が郊外にも出来てきたでしょ。夏場は特に臭いって苦情もくるし。ぜひ、それ進めてくださいよ。ついでに、設備投資のほうの支援もどうかひとつ。乳牛やってる藤木牧場さんも、豚やってる花沢養豚さんも、いよいよ廃業かななんて言ってましたよ。」

どうやら、解決すべき問題は稲わらだけではなさそうです。

事業計画者のための着眼ポイント

(1) 地域課題解決のための問題点の整理

バイオマス利活用推進の最も大きな原動力は、明確な問題意識である。地域で特に困っていること、 ここでは稲わらの野焼きによる公害、家畜排せつ物法に伴う畜産家の経営困難が取り組みの入り口となっている。 新規事業への挑戦には、なかなか合意形成がとりにくいものである。問題意識を持ち寄り共有できる場作りから 始めることが実は、事業推進への早道であることが多い。また、戦略構想策定に際して、直接的な廃棄物処理の 問題以外にも、担い手の高齢化や休耕地の増加、交通の便の悪さなど地域での暮らしにまつわる問題意識を 広く聴取しておくことが重要である。

(2) モデルケースや類似事例の探索

類似の産業構造や、地勢の地域での選考事例は事業導入の参考となることが多い。 しかし、さらに重要なことは、そこで、どのような事柄が「うまくいかなかった」に着眼することである。 成功している事例の中にも、必ず試行錯誤や推進上の問題への対応があるものである。優良な結果のみを見て それをそのまま導入しようとしても、起こり得る問題への対処が迅速にできるとは限らない。

4. 地域の知恵をもちよる計画組織づくりへ

家畜の排せつ物とか、他の廃棄物も組み合わせて、連携して取り組めばもっと合理的にやれそうだ。これは、一度整理してみる必要があるな。」

野比さんは、改めて村内のバイオマス資源について整理してみることにしました。すると、水田からは稲わら・もみ殻、畑地からは規格外の野菜や蔓などの非食部分、畜産業では家畜排せつ物、林業からは間伐材、製材端材、漁業系の廃棄物、食品加工残さ、生活系の生ゴミ、下水汚泥などなど、ゴミになっている使えそうなバイオマスはたくさんありました。ただし、それらが発生する季節はまちまちであり、どの程度あれば十分なのかもいまいちよくわかりません。さらに、作られた堆肥やエネルギー、さらにはそれを使って作られる産品が売れなければ、みんなの利益を生みません。それには物流や販売促進のノウハウも必要です。気付いてみれば、野比さんの頭の中は、バイオマスをきっかけにどんな「まちづくり」、「まちおこし」をするかという発想に変わっていました。

「どうせやるなら、みんなが長いこと儲かるようにやらなきゃな。」

それには、もっと仲間を増やして、技術的な知識も入れて調査することが必要だと考えました。調べてみると、そうした資源の明確化や、地域循環型の事業連携の方向性を地域のビジョンとして策定する支援事業が色々あることがわかりました。

早速、町長、議会、財政の内諾をとり、県の担当者に連絡して、バイオマス利活用フロンティア推進事業に申請をすることにしました。こうして、めぐる町のバイオマス戦略構想策定が始まったのです。

事業計画者のための着眼ポイント

(3) 計画組織づくり

ビジョン策定に際しての議論は、通常、主に概論と設備導入の経済性に終始しがちであり、 受益者となるべき地域の事業者や住民の意向が見えないことが多い。めぐる町ではビジョンの 策定過程そのものが町内の連携をつくり、仲間を増やす普及啓発にに直結している。 そのため、バイオマス総合戦略策定委員会のメンバーはユニークだ。行政担当者、学識経験者 、農協、コンサルに加え、計画の段階から商工会、議会、教育委員会、社会福祉協議会、NPO等の 横断的な検討体制としている。バイオマス利活用を成功する重要なポイントは、地域の課題解決と 連動することによる地域での理解と協力体制作り、また変換によって作られたバイオマス製品の 販売体制をつくることにある。そして、最も大切なことが、推進の核となる人づくり。野比さんの事前の動きが、実は連携のコーディネート役となったおかげで ビジョン策定への着手がスムーズに進んでいる点がポイントである。